【F1】第1回 伝説のレースを振り返ろう【2013 韓国GP】

どーも。

皆さんご存知の通り世間はレースどころではなく、延期または中止の発表が相次いでいますね。そんな今だからこそ、伝説のレースを振り返りつつ、のんびり開幕を待ちましょうという記事です。

記念すべき第1回は、いきなり変化球で申し訳ないですが、自分の中でとても印象に残ったあのレースです。

2013年のF1

この年のF1は、空力の天才ニューウェイがマシンを手がけるレッドブルチームのベッテルが好調。前半戦こそロータスキミ・ライコネンや、フェラーリアロンソメルセデスAMGロズベルグら実力者たちが立ちはだかるも、ベッテルは第11戦から19戦まで9連勝。後半戦は全レースベッテルが優勝しました。そんな無双状態の中で迎えたのが、第14戦韓国グランプリです。

 

予選
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ベッテルが最速タイムです。チームメイトのベテラン、マーク・ウェバーは3番手タイムですが、前のレースでのペナルティにより後ろからのスタートが決まっています。ザウバーの2台が健闘し、10位以内に食い込んだ一方、名門マクラーレンは2台とも予選2回目で敗退しました。

この年、残念ながら日本人選手は出場していませんが、日本のF3レースで活躍したスーティル選手が参戦しており、予選14番手に入りました。

 

迎えた決勝

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スタートはベッテルが先行。3番手スタートのグロージャンが、ハミルトンをかわして2位に浮上。一方、後方では大混戦となり、フェラーリフェリペ・マッサはライバルと接触し、スピンしてしまいました。ベッテルは後続を引き離しにかかるも、ぶっちぎりとはいかず、グロージャンがなんとか食らいつく展開。

レースが中盤に入ると、徐々に荒れ始めます。

28周目、チームメイトのハミルトンをかわしたロズベルグのマシンのフロントウィングが外れ、引きずりながらの走行に。幸い大クラッシュにはならなかったものの、ピット作業でタイムロス。

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31周目には、マクラーレンペレスのタイヤが突然バースト。

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タイヤの破片が散らかったため、セーフティカー(SC)が導入されます。ピットインのタイミングが功を奏し、ライコネンが3番手に浮上しました。

 

伝説となった「炎上事件」

36周目にレースが再開されると、ここでもアクシデントが起こります。長いストレートからのブレーキングで、スーティルがバランスを崩しスピン。運の悪いことに、前を走っていて、コーナーを曲がろうとしていたウェバーのマシンの右後ろにぶつかってしまいました。

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突然後ろからぶつけられ、コースアウトしたウェバー。コースに復帰しようとしますが、当たりどころが悪いとはまさにこのことで、彼のマシンは突然火を噴き、炎上。たまたま熱い排気が出るエキゾーストのところに当たってしまったのです。

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ウェバーはなんとか脱出、車載消火器で初期消火を試みるも、火の手は強く、消せません。しかし、本来駆けつけるべきコースマーシャルは、棒立ちのままだべってて、誰ひとり来てくれず。燃え尽きる愛車の横で立ち尽くすウェバー。状況を見つめるレッドブルチームのメンバーも、頭を抱えます。

この間、コース上では3位のライコネンが、1コーナーでチームメイトのグロージャンに襲いかかり、2位に浮上。ところがその次の直線で、首位のベッテルの前に、謎のSUVがあらわれ、道の真ん中を走るわけわからん展開。

SCとおもったドライバーたちは減速し、隊列を作りますが、SCを示すボードはまだ出ていません。SCが出されたのはその直後です。本物のセーフティカー(メルセデス・ベンツSLS)が隊列の最後尾からひょっこり現れ、全員混乱状態です。

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謎のSUVの正体は、消火器を積んだ車とのこと。

黒煙を噴き上げる火災現場に向かいますが、、、

 

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ぷしゅ〜(粉末消火器)

 

F1マシンというのは精密機械なので、部品を守るため、酸素を遮断して消火する二酸化炭素消火器を用いるべきなんです。粉末消火器を使うと、細かい粒子が入り込んで、部品が壊れてしまいます。初期消火の段階で、コース脇に粉末消火器しかなかったとか、そういう状況ならば仕方ないかもしれません。しかし、F1のレースで、燃えるマシンを見つめる選手を放置し、散々待たせておいて、レース中の道に乱入して、やっとこさ持ってきたのが、おうちにありそうな粉末消火器だったんです。

私が見ていた中継で解説をしていた森脇基恭氏が、普段の優しい語り口からは想像もつかないような低い声で、「最低です」と語っていたのがとても印象に残っています。

きっとご自身も長年エンジニアとしてレースに携わってきた中で、メカニックたちが頑張って仕上げたマシンを粗末に扱うマーシャルたちの姿が許せなかったのでしょう。

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消火対応の遅れのせいで、マシンは無残な姿になってしまいました。レッドブルクリスティアン・ホーナー代表は、公式サイトのコメントで、まるで永遠に自分たちのクルマが燃えているような気がしてフラストレーションを感じた」と語りました。

画像をよく見ると、マシンを吊り下げているマーシャル、ノーヘルです。

レース結果

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炎上騒ぎの後は淡々とレースが進み、ベッテルが優勝。予選10位から挽回したライコネンが2位、3位グロージャンロータスの2人が表彰台です。

レース終盤、ザウバーヒュルケンベルグの奮闘が光りました。決して速くはないマシンで強豪を抑えきり、4位に入りました。マッサペレスはそれぞれスピン、タイヤトラブルから挽回し、ポイントを獲得しました。

 

教訓

韓国GPでは、コース上で好バトルが繰り広げられた一方で、コースマーシャルをはじめとする、運営面の重要性を示すことになりました。

々がレースを楽しめるのは、たくさんの人々の支えがあるからです。レースが見たい、レースがやりたいからって、いきなり選手と車を用意して、ヨーイドンってわけにはいかないんです。

コースマーシャルの方々も、レースを支えている重要な存在のひとつです。下手すると300km/hで走る車に轢かれるかもしれない中(実際に死亡事故も起きています)、まさに命がけで頑張っています。時には火の手に立ち向かい、時にはクラッシュしてしまった選手のもとに駆け寄り、救助をする。危険があれば選手にフラッグで知らせ、レースが終われば戦い終えた選手をフラッグで出迎える。彼らがいてこそ、選手は全力で車を走らせることができるし、ファンも楽しめる。

 

普段の生活でも、人々が快適に過ごせるように、日の当たらないところで頑張っている方は必ずいらっしゃいます。そんな方々に感謝しながら、毎日を生きていきたいですね。

ではまた。